News

2016年04月04日

反電子ニュートリノ出現現象の探索

大阪市立大学高エネルギー物理学研究室が参加しているT2K実験では2014年5月以降、反ニュートリノモードでデータを収集していますが、2015年5月には反ミューニュートリノの消失現象を既に観測しています。現在は反電子ニュートリノの出現現象の観測に向けてデータ収集を継続しているところです。2014年5月から2015年6月にかけて行われた反ニュートリノモードでの最初のランでは取得目標の10%にあたるデータを取得しましたが、その中に3個の反電子ニュートリノ事象候補を見つけました。

図1: スーパーカミオカンデで観測された反電子ニュートリノ反応事象候補

ptheta_data_pdf_nh_1re_beta1_fixedzscale-1

図2 : 3個の反電子ニュートリノ事象候補に対して観測された電子の角度と運動量の分布。3個の黒点はデータを表し、色付けされた背景のヒストグラムは、ニュートリノモードの結果をもとに期待される分布を表す。

図1はスーパーカミオカンデで観測されたその中の1つの事象です。T2K実験では、2010年から2013年にかけてニュートリノモードでデータを取得し、ニュートリノ振動によってミューニュートリノが電子ニュートリノに変化する割合を測定しました。その割合を反ニュートリノにもそのまま適用すると、1.8個の背景事象を含む3.8個の反電子ニュートリノ事象が期待されました。図2は反電子ニュートリノ反応によって生成した電子の運動量と散乱角の分布を表しています。3個の黒点はデータを表し、色付けされたヒストグラムはニュートリノモードの結果をもとに期待される分布を示しています。3個のデータではまだ結論を述べるには少なすぎますが、これがT2K実験での反ニュートリノモードの最初の結果になります。

ニュートリノでCP対称性が破れていると、反電子ニュートリノの出現割合は予想よりも異なることが考えられます。CP対称性の破れは、宇宙がほぼ物質だけからできていて反物質がほとんどないことを説明する有力な考えですが、それがニュートリノによっても引き起こされているかもしれないと考えられています。現在は加速器のビーム強度を上げてデータを取集しており、それらのデータを加えると、さらに詳しいことが分かってくることでしょう。