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高エネルギー物理学研究室

高エネルギー物理学研究室では、主に高エネルギー粒子加速器を使って素粒子物理学の実験的研究を行っています。現在は、

  • T2K実験(長基線ニュートリノ振動実験)
  • DeeMe実験(荷電レプトンフレーバー非保存過程探索実験)
  • CDF実験(高エネルギー陽子反陽子衝突実験)

を軸に、それらに関わる検出器開発も含めて、物質の最小単位および力の源でもある素粒子の基本的性質の解明や、素粒子標準模型を超える新しい物理の探索を行っています。

「高エネルギー物理学」の名前が示すように、素粒子物理学を研究するには一般的に高いエネルギーが必要になりますが、それは大きく分けて2つの意味があります。

nuclei-quarks1つ目は、小さなものを見るためには短い波長が必要になるということです。電子顕微鏡を使うと細胞や結晶などの構造を高い解像度で見ることができますが、これは加速された電子が持つ短い物質波を利用しています。同じように、さらに小さな原子核や陽子などの構造を調べるには、さらに短い波長の粒子、つまり運動エネルギーの高い粒子をプローブとして用いれば可能になります。ここから「ミクロの世界」↔「高エネルギー」の関係が生まれてきます。

dilepton_event2つ目は、重い粒子を作るためには高いエネルギーが必要になるということです。アインシュタインの相対性理論により、エネルギー E と質量 m の間には、E = mc2 の関係がありますが、これを言い換えると、高いエネルギーを集中させれば重い質量の粒子を作り出せるというということになります。実際には、粒子どうしを非常に高いエネルギーで衝突させると、衝突粒子およびその構成要素以外の新たな粒子が生成されるという現象となって現れます。理論で予言された新粒子がこの方法でいくつも発見されてきました。2012年に発見されたヒッグス粒子もその1つです。しかし、発見に至っていない未知の粒子もまだ数多くあります。また、普段の身の回りに存在しない素粒子の性質を調べるためにも、それらを生成しなければいけません。このように、素粒子を生成する手段として「高エネルギー」が使われます。

bigbangさらに、現在の宇宙が膨張しているという観測結果から、宇宙はビッグバンによって非常に小さくエネルギーの高い状態から生まれたということが分かってきました。ここから素粒子物理学と宇宙物理学の間に密接な関係が生まれました。初期宇宙における素粒子の振舞いが現在の宇宙の姿を作り出したとも言えます。例えば、素粒子反応では粒子と反粒子が対になって生成されますが、現在の宇宙には反物質がほとんどありません。また、銀河を形成するには普通の物質だけではできないことも分かってきました。これらの謎を解く鍵も素粒子物理学にあると考えられています。